初めに
自動車診断オシロスコープは、センサー、ソレノイド、アクチュエーター、1次および2次点火、通信データ・ストリームなどのトラブルシューティングに必要なツールです。自動車専用のオシロスコープは、自動車用ラボ・スコープ、エンジン・アナライザーまたはモーター・テスターとも呼ばれます。
故障コードがECUに保存されていないことがよくありますが、故障コードが記録されていなくても故障している場合があります。動作サイクルの途中でセンサー/アクチュエーターが停止していると、DTCが記録されません。このような場合において、自動車診断オシロスコープは、非常に有効な診断機器です。それは、これ以外のツールでは対応することができない機器であることが言えます。たとえば、ゆっくり変化するアナログ信号、スターター電流波形、充電電流などの場合はオシロスコープでしか診断できません。また断続的な問題を分解して解析することができるので、点火スパークプロセスなどを視覚化することができます。一般的なデジタルオシロスコープでは1つのシリンダーに点火波形を表示することができますが、自動車診断専用のオシロスコープであれば、すべてのシリンダーを同時に表示することができます。
以下に自動車診断用オシロスコープを選択する際に必要な重要なポイントを説明します。:
1. オシロスコープとスキャンツールを1つのユニットにまとめるのは良い考えではありません。
•もっとも致命的な理由は、オシロスコープとスキャンツールの両方を同時に使用できないことです。
•スキャンツールのオシロスコープは、同じプリント回路ボード、同じ電源を共有しており、このタイプのオシロスコープは優れた自動車診断用機器として機能しない可能性が高いことを意味します。
2. 自動車診断オシロスコープのユーザーインターフェースの推奨事項は？
•基本的に、科学および産業用のオシロスコープは使用しないでください。 このようなスコープは、学習とトレーニングに多くの時間を必要とします。 なぜなら、自動車用アダプターはないですし、プリセットを持っておらず自動車用の測定がそもそもできません。
•自動車プリセットデータベースが含まれていますか？ プリセットは、垂直スケール、タイムベース、トリガ位置などを自動的に調整し、セットアップと操作を簡単にします。 オシロスコープには、新しいプリセットを追加して編集する機能がありますか？
•ユーザーインターフェースにより、高電圧測定、イグニッションピックアップ、電流クランプ、圧力トランスデューサ、温度センサなどのために、既存のさまざまな入力プローブを新規追加または編集できますか？
•内蔵のパターン波形ライブラリがあり、新しいカスタム波形を追加することは可能ですか？
•点火スパークプロセスを視覚化して、隣り合わせに表示されているシリンダーを表示することはできますか？「パレード」スタイルで表示されますか？
•現在の波形に720度のフレームをオーバーレイする可能性はありますか？ 全720度のクランクシャフト回転測定ルーラーは、すべてのエンジンサイクルを観察するのに非常に便利です。
•保存された実波形を他のオシロスコープのユーザと共有出力することは可能ですか？
3. PC型 vs.ハンドヘルド型オシロスコープ
現場でオシロスコープを使用する必要がある場合は、ハンドヘルド・オシロスコープが適しています。 主な利点は、可動式で頑丈なフォームファクターでベンチオシロスコープの性能を提供できることです。 ハンドヘルドスコープは、PCベースのスコープと比較して接続が少ないため、設定が簡単です。 ハンドヘルド・オシロスコープのリアルタイム・エンベデッド・システムは、多く問題の原因になるオペレーティング・システムを必要としないことは大きな利点です。
一方で、PCベースのスコープでは画面が大きくなり、多くの場合、測定データをPCのハードドライブに保存することができます。 多くの場合、受信データが主にPCで処理されるオシロスコープは、非常に大きなメモリー深度を持っています。
使用しているPCの故障や車内のECUの損傷を引き起こす可能性のある高電圧を転送することを避けるため、PCとPCオシロスコープの間にガルバニック接続がないことを確認する必要があります。なぜならすべてのオシロスコープ が持っているわけではないからです。
4. チャンネル数?
オシロスコープには、1チャネル、2チャネル、4チャネル、および最大10チャネルの製品があります。 どれを選択するかを決めるときには、表示する信号の数を考慮する必要があります。
信号の存在を判定するために迅速な診断を行い、正常な範囲内にあるかどうかを判断するためには、1つのチャネルで十分です。
センサからのカムシャフト/クランクシャフトの相関信号や読み取り信号、インジェクタとコイルの波形、サーミスタの電圧出力、スロットル位置センサの出力などを見るのに2チャンネルで十分です。
イグニッション回路の同時表示が必要な場合、または主要な入力と出力を一緒に見てみると、障害が迅速にどこにあるかを判断するのに役立つ標準的なクランク始動条件を処理する場合、4つの独立した独立したチャネルを備えたオシロスコープが一般的に使用されます。
5. 重要なスペック
多くのメカニックは、範囲の仕様をみただけで理解し、テスト要件に適合しているか判断するのを難しいと感じているのではないでしょうか？
-帯域幅
帯域幅は、スコープが表示できる最高周波数の電気信号を定義するものです。 波形を正確に表示するには、オシロスコープの帯域幅が測定する信号の最大周波数よりも大きい必要があります。 しかし、不必要に高い帯域幅ではオシロスコープの画面にノイズや不要な信号をたくさん表示することに注意してください。 スコープの帯域幅が測定目的に合っていることが重要です。
高帯域幅のスコープは非常に高価になる可能性がありますので、多少の妥協を要するかもしれません。 帯域幅とは、入力信号が3dB減衰する周波数のことです。 このことは、オシロスコープの帯域幅付近で信号を正確にキャプチャすることができないことを意味しており、オシロスコープの帯域幅は最大測定周波数の約2倍でなければなりません。
- サンプリングレート
サンプルレートは、オシロスコープがテスト中の回路をサンプリングする1秒あたりの回数です。 ほとんどのオシロスコープには、リアルタイムサンプリングと等価時間サンプリング（繰り返し）の2種類のサンプリングレートまたはモードがあり、メガまたはギガサンプル/秒（MS / sまたはGS / s）で指定されます。 オシロスコープを選択するときは、仕様が適用されるサンプリングのタイプを確認してください。 自動車整備用途では、等価サンプリングは推奨されません。定期的な信号に対してのみ有用であり、適切ではないからです。 サンプルレートが不十分な場合、特定のパルスの真の振幅と持続時間を明らかにすることはできません。 ほぼすべての診断アプリケーションでは、1秒あたり約20,000,000サンプルが適しています。
- メモリー深度
キャプチャされたデータがオシロスコープに格納されるバッファメモリのサイズは、メモリー深度として知られています。 ディープ・メモリを備えたオシロスコープにより、ユーザーはより長い時間にわたってより高いサンプル・レートを維持することができます。 これは、信号を拡大するときに最も明白です。 メモリの深さが限られていると、サンプル点が離れすぎるため、オシロスコープが波形を正確に捕捉できなくなります。
非常に大きなメモリー深度の大きな欠点は、データが大きすぎるため、探しているイベントを手動で検索して見つける必要があることです。
余分なメモリ深度のもう一つの欠点は、特定の条件の下ではオシロスコープが遅くなり、デッドタイムが長くなることです。 これを対策するためには必要以上に高スペックで高価なPCやタブレットを使用する必要があります。
- 解像度
オシロスコープの小さい電圧を分解する能力であり、いくつかのオシロスコープのパラメータに依存します:
-エンベデッドアナログ/デジタルコンバータのビット数。 通常、8ビットの垂直解像度で、すべての車載アプリケーションで十分です;
-入力減衰回路;
-入力信号プリアンプのタイプ（存在する場合）.
7. プローブと入力範囲
オシロスコープを選択する際は、入力レンジを拡張してデバイスのアプリケーションを拡張するためのアクセサリを提供しているメーカーを探してください。
インジェクタ、1次および2次イグニッションなどの高電圧または電流信号測定を実行するには、オシロスコープの入力範囲を適切な入力プローブで拡張する必要があります。 10：1、20：1の減衰器、容量性および誘導性のピックアップクランプ、電流クランプ、AC結合アダプターなどがあります。入力プローブが少なくともスコープの帯域幅を超えていない場合は、一致させる必要があります。
8. まとめと一般推奨事項
いくつかのメーカーは、実際にオシロスコープを購入する前に、ほぼすべての機能とメニューを見たり、テストしたりできる無料のデモンストレーションPCソフトウェアプログラムを提供しています。 さまざまなメーカーのオシロスコープを試してみることで、アプリケーションに最適な選択をすることができます。まずは次のことを確認してください:
-オシロスコープのパッケージセットには何が含まれていますか？ どのケーブル、アクセサリ、プローブがセットに含まれており、将来購入できますか？
-ツールにはどのようなソフトウェアが付属していますか？ 何が更新されますか？ ソフトウェアはどのようなアプリケーションに対応していますか？ 車両の設計と機能の変更により、ソフトウェアの更新頻度はどのくらいですか？ ソフトウェアのアップデートは有料ですか、無料ですか？
-売り手は誰ですか？そして彼らはサポートを提供するために十分な資格と経験を持っていますか、それとも単に機器を販売するだけを提供するベンダーですか？
- ハードウェアの修理が保証期間および保証期間後に必要な場合にもハードウェア修理に対応していますか？
これらのすべてが自動車診断用オシロスコープを購入する際に考慮すべき事項です。 オシロスコープを購入する際に信頼すべき相手は自分自身です。 誰もが同じことを必要とするわけではありません。 ご自身のニーズとスキルレベルに基づいてこれを個人的な選択にしてください。
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